'98.2(旧→新)
〜譫言〜
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目の前にある私 エンギオロシ不合理不確実悲しい居場所坂道の遊び青い人ガラス路地聞こえない音食べること あなたへの独り言着せ替えミ(外) 知ったこと




目の前にある私 '96'97

こんなことを考える時がある。
「人に食べられたものは人の体の一部になるのだから、 つまり、目の前にある食べ物は、未来の私なのだ」

切り落とした髪を見ながらこんなことを考える時もある。
「これはさっきまで私だったのだ」


結局のところ、私って何だ?



  エンギオロシ 〜1997.11  
 まだ何でもかんでも周りの物に対して”さん”を付けていた(私がそうだったとは限らないが)ような頃、 いろいろな人が縁起が悪いと言って「4」という数字を嫌うのを見て、『「4」はかわいそうだ』と思った。
何か作業をするにしても、「4」はとても有能な数字だ。多すぎず、少なすぎず、また、2つずつ に分けても余りが出ない。それなのに、嫌われてしまうなんて・・・、と。
 そこで、私はたくさん「4」を使った(実際には”使ってあげた”という感覚だった気がする←哀れんでいるわりに傲慢)。


 それから大分経った今でも、時々「縁起をかつぐ」という言葉に、つい対抗してしまいたくなることがある。しかし、逆にそれは「縁起をかつがないこと」で縁起をかついでいるとも言えるのかもしれない。


 縁起とは少し違うが、例えば横断歩道の”白”だけを2.3回続けて踏んでしまうと(あくまで例えの話. 私のことではありませんよ)、 次第に「”白”を踏み外したらダメなことにする」という気持ちになってくることが時々ある。 多かれ少なかれ、こういう観念にとらわれずにサイコロのように生活が出来たら楽だろうに。・・・・少々味けない生活になったとしても。



 不合理 〜1997.11  

縦書きの原稿用紙に文字を書くとき、普通右から行を埋めていく。
しかしこれは、右利きの人にとっては少々不利なことに思える。書いたインクで手や紙が汚れるからだ。
一般的に、世の中には左利きより右利きの人の方が多いようなのに、なぜ縦書きは右から書き始めることになったのだろうか?

もっとも、キーをたたいている今の私にはどうでも良いことであるが。

  ↑
解決しました。



不確実 〜1997.11

以前から、自分が見たり感じたりしているものは本当に”確かなもの”なのか疑問に思っていた。
例えば、色。

自分が「白」と言っている色は、他の人にとっても同じ「白」なのだろうか?もしかすると「黒」ということはないだろうか。
「白」と「黒」という単語を初めから間違って(ここで「間違える」という言葉は適当ではないのかもしれない)覚えていたらどうだろう?

・・・色を見たときの感覚の表現でわかるって?
では、感覚の表現のしかたも初めから間違って覚えていたらどうだろう?間違ったまま、すべてのことを納得してしまっていたらどうだろう?

という風に、時々同じところをぐるぐる回ることがあった。


実際、やや人工的ではあるが、以前パソコンを使い始めた頃、256色以下という設定で画面を見ていたときがある。その時はいろいろなページを見ながら、「そういう色なのだ」と納得していた(特に何も思わなかった)。 そして、ある日設定を変えてみると・・ 、そこには、今まで私の知らなかった世界が、広がっていたのだ(大袈裟?)。


そんなことも忘れかけていたある日、色弱者の方を特集した番組がTVで放送された。
彼は「この色はどんな風に見えるのか」と、時々人に訊かれるそうだ。
答えは「色の感じ方は人それぞれ違い、それをどの様に見えているかを説明することは出来ない。”ある色”は、その人にとっての”ある色”でしかない。」というようなことだった。

私は何となく、その言葉にすくわれたような気がした。



悲しい居場所      

夢の中の夢から覚めた瞬間、いつだって私は同じところにいる
どんなに遠く離れた場所で眠りについたとしても、私はいつも"ここ"にいる

そしてこの後、夢から覚めた瞬間、再び遠く離れたところへ還ってしまうんだろうな
いつもみたいに息苦しくてどうしようもなくなるに違いない



          坂道の遊び 1997.12

    記憶が時間の傾斜を転がっていく

    私は昨日と同じように坂の上に立つ
    小脇にお菓子の空き箱を1つ抱えて

    おきまりの遊びが始まった
    いくつかの記憶達を、箱から取り出すと
    自分の足もとにそっと置いた

    それらは奇妙な音を坂道に刻みながら
    ゆっくり転がり始める
    やがて坂の下に止るまでの短い間
    私はその様子をただ呆然と見ている
    箱の中身がなくなったなら
    坂の下まで拾いに行って
    少し前にも手にしたものを再び転がせばよい

    そうやって私の遊びは今日も夕方まで続くのだろう



青い人 1997.12    

  明け方近くに、ある少女の夢を見た
  少女の姿はなんとも弱々しい
  私はそんな彼女に依存して生きている人間なのだ

  彼女はほんの一瞬青白く光って微笑んだかと思うと
  私の前の空気を波も立てずに泳いでいった
  私は大切なものを失った気がして少し焦った

  しかし、今になって考えてみると
  元々失うものさえ掴みきれていなかったに違いない
  彼女の目は、いつも私を透かして遠くを見ていたのだから
  いや、あるいは私もそうだったのかもしれない



 ガラス路地 1997.9(12)

必死で足元の隙間を探す私の周りには
無数のもろいガラスがひしめいている
カラダから溶け出すことが出来たらな
そしたらあなたも割れずにすんだのに



聞こえない音


音の聞き方というのはいくつかあると思うが、私は主に耳を使って聞いている。しかし一つだけ、それがどうしても出来ない音がある(正確にはあった)。

私の実家にはぜんまい仕掛けの古い柱時計(今もう動いていない)が掛かっている。問題はその時計が刻む音。
音が鳴っていることは認識しているのに、なぜか耳で聞くのとは、どこか違っていた。感覚で聴いていたと言えばよいのだろうか。音が直接頭に入ってくるような感じなのだ。不思議に思った私は家の人に「あの時計の音はなぜ耳に聞こえないのか」と訊いてみると、どうやらそう感じているのは私だけのようであった。

とうにあの時計は止まってしまったので、今改めて聴いてみることは出来ないのだが、かえってその方が良かったと思っている。おそらく今なら、普段そうしているように耳を使って聞いてしまうだろうから。

時計が時を刻まなくなってだいぶ経ってしまった今でも、耳(感覚?)を澄ますとすぐにあの”音”が戻ってくる。



食べること 1998.1         

  「食べる」という夢を立て続けにいくつか見た
  そのなかの一つ

一羽の鳩が殺された
硬直した一個の鳩が私の手の上にころがっている
その死骸を凝視する私
「肉」というものがが私の脳裏に映しだされる
食べなければ‥‥これを食べなければ‥
‥‥これを?

一滴の水をを口に含んみ、無理矢理自分を落ち着かせる
そして「肉」を足下の草の上へ置いた
やがてそれは辺りに腐敗臭をまき散らし蠅の群を呼び寄せた

私は振り切るようにコンクリートの道を蹴って逃げ出した
「なぜ食べない」
どこかからそんな声が聞こえてきた気がして振り向くと
視界一面に見慣れた薄暗い天井が浮き出てきた

夢はそこで終りだが
現実の世界では今まさに食事が始まろうとしている
それを当たり前の行為、幸せの行為として

哀れみの感情ではないです


 
あなたへの独り言 1998.1

たまに私は独り言を言うことがある。しかしそれは、何となく口に出るとか、寂しいといった理由からではない。
独り言といっても、私の場合、二人(あるいはそれ以上)言である。一人でいる時、勿論そこには私一人しかいないつもりなのだが、実際どこに誰が潜んでいるのかわからないのも確かだ。 もしかすると、亡霊(いたとしたら)に見られているかもしれないし、どこかから監視されているかもしれない(まさか)。だから、自分の行動にいちいち説明を付けるのだ(ごくたまにだけど)。
「今私はこんなことをしているけれど、決してこういう状態に甘んじているわけではないのだ」‥‥あ、ちょっと違う。 「たとえ向上心がなくっても(?)、本当はこういうつもりではないのだ.こういうことは嫌いなのだ.」 という気持ちを込めて、一言だけ。
私の行動をおかしな目で見ている誰か、そして私のために。


でも私は独り言が好きではない‥‥


 着せ替え 1998.1

今日の私が逃げていく
私はここに居るけれど
私に黙って逃げていく

いまの私は誰ですか?
科学は進歩したくせに
何と不思議な事だろう

明日は私がやってくる
私になりにやってくる
はじめまして 私の私



見たもの


     

   いつかあなたは私に言った
   この管があるから私がこうしていられるのだと

   たった1本の細く濁った線
   これがわたしというもの
   管が息をし、管が何かを感じる

   夢と現との狭間でそれは想い描く
   誰かが自分を引きちぎってくれること
   どうしようもなく馬鹿げたことを
   そんな時、私は顔の内側で大袈裟ににやけてみる




知ったこと

「嫌悪する」という感情を自分の中に見出したとき
私は天を仰いで歓喜しました
同時に私の求めるものを知ったからです
漂っていた私は座標のある一点にに受け止められました

「憎む」という感情を自分の中に見出したとき
私は悲しみに暮れました
それが私の求めるものに向けられていると知ったからです
受け止められた私は点の中でもがきました


   
   


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