■ アラームについて
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このページは先日(2002.07.19)、病棟のスタッフにミニレクチャーしたものを再利用しています。 よって充分な推敲ができていないのと、説明の内容が「バード8400STi」という機種を対象になっていますので、ご注意ください。( ^.^)( -.-)( _ _) ちょいと長いのですが、お暇なときに。 目覚まし時計は誰だって一コぐらいは持っているでしょう。 私は朝が苦手なので、目覚ましなしでは起きれません。 目覚ましが鳴る前には必ず目がさめるって人もいるようですが、たいていの人は毎朝格闘しているのではないでしょうか? さて、朝7時に起きたいときに、あなたは何時に目覚ましをセットしますか? 4時にセットする人はまずいませんよね。 8時にセットする人もいません。 一回では起きれない人は30分前から5分おきに鳴らすって人もいるでしょう。 でも、ついアラームを切ってしまって気がついたら寝過ごした!!って経験ありませんか?(私ももちろんあります・・・。) 目覚ましのバカヤロウ!!と怒鳴り散らしながら、バタバタと支度をするのですが、目覚ましが悪くないことぐらいは分かっています。 呼吸器のアラームとて同じこと。 教えてほしい状態に合わせておかなければ、何の役にも立たないし、うるさいからとオフにしておいて「教えてくれなかった!」と非難するのは筋違い。 アラームは消すためにあるのではない。 消音して「おしまい」じゃ、アラームが泣きます。 アラームは医者のためにあるのではありません。 一番側にいる私たちが適切に看護し、危険を早期に発見、回避するためのものです。 初期値のままでずっと鳴らしっぱなしにしてはいけません。 「また鳴ってるよ〜」てアラームをないがしろにしないでください。 狼少年にしてしまうかもしれないのは、アラームのせいではなく使う私たちです。 アラーム音は患者や家族を不安にさせ、悪影響を及ぼします。 アラームが鳴ったときの観察とアセスメントをしっかりして、必要に応じてアラームの設定値を変え、記録に残しておきましょう。 さて、前置きが長くなってしまいましたが、本題のアラームについて勉強を始めましょう。 バード8400に備わっているアラームにはどんなものがありますか? 気道内圧上限 気道内圧下限 PEEP/CPAP圧下限 分時換気量下限 換気回数上限 無呼吸 ですね。 アラームがあるということは、「これらには早急な対処が必要」ということを意味しています。 まず、アラームがなったら消音して、原因を確かめるようにしましょう。 アラームの種類によって対応が異なるからです。 そして原因を取り除いたら、必ずリセットしておきましょう。 次に鳴ったときに、いつのアラームかわからなくならないように。 (最新の呼吸器には履歴が残りますが、履歴までチェックする暇はそうないでしょ。) よくアラームが点滅したままになっていますが、あれでは最新のアラーム情報がわかりません。 そうすると適切な対処ができなくなります。 では、具体的に一つ一つのアラームについて考えてみましょう。 まずはアラームの筆頭、気道内圧に関してです。 stage2の「陽圧って何だ」ってところで、「人工呼吸器で行う換気では、気道内圧は陽圧になります」とお話しましたが、それは何故だったでしょう。 私たちが普通に呼吸しているときの気道内圧はどれぐらいでしょうか?? 私たちの呼吸は、吸気で「陰圧(大気圧より低い圧)」になります。 呼気の最初でほんの少し陽圧になりますが、終わりにかけて大気圧とほぼ同じになります。 それに対して、人工呼吸時は吸気で陽圧になり、呼気で戻ります。 PEEPがかかっていれば、PEEPの圧で始まりPEEPの圧に戻ります。 正常の場合とまるっきり逆だということがわかりますね。 じゃ何故逆だとまずいのでしょうか? アラームをつけてまで気道内圧に注意を払わなければならないのでしょうか? ひとつはバロトラウマ(barotrauma)、肺胞の外的損傷、つまり肺が破れて気胸を起こす危険性があるからです。 また高い気道内圧が持続すると肺胞に障害を来たし、循環動態にも悪影響を及ぼすこともあります。 さて、一回換気量が一定なら気道内圧はいつも一緒でしょうか? ○○さんに500ml換気するのと▽▽さんに500ml換気する時、気道内圧は同じでしょうか? そうそう、違うんですよ。 気道内圧は一人一人、一回一回、変化します。 では、同じ換気量で換気しているのに気道内圧を変化させる要因はいったいなんでしょうか? これもstage2「圧を変化させるもの」でお話しましたが、もう一度復習してみましょう。 その人の肺のやわらかさ(コンプライアンス)、吸気流速、気道抵抗、患者さんの呼吸(吸気努力や咳嗽反射)などですね。 真新しい風船と、何回も膨らました風船、同じ大きさにするのにどっちが簡単でしょう。 何回も膨らました風船の方ですね。 これは真新しい風船に比べてやわらかいからです。 膨らましにくいってことは、膨らますときにいっぱい圧をかけないと膨らまないってことで風船内部にかかっている圧が高い状態といえます。 肺に病変のない人と肺線維症などで肺がガチガチに固くなった人では、気道内圧は違ってきます。 同じ風船を、ゆっくり膨らますのとぴゅっと膨らますのとではどっちが楽でしょう。 ぴゅっと膨らますのは簡単ではありません。 つまりかなりの圧を要します。 吸気流速が早すぎると気道内圧は上がってしまいます。 風船にホースをつけて膨らますのと、ストローをつけて膨らますのとでは、どっちが楽でしょう? ストローで膨らましたら頭に血が上ってアポりそうになりますよね。 それだけ圧を必要とします。 挿管チューブの太さでも気道内圧は変わります。 ちなみにストローをくわえて息をしてみてください。 どんなに苦しいかわかるでしょう。 不適切に細い挿管チューブは苦しみを与え、呼吸仕事量を増やし、酸素消費量を増やし、頭蓋内圧を上昇させます。 痰が引きにくいため、ますます分泌物でチューブ内は細くなり気道抵抗が増すという悪循環をきたします。 もう一つ気道内圧に影響するものは吸気努力や咳嗽反射など患者さんの呼吸です。 風船の本体を方々から引っ張ってくれると膨らますのは随分楽になりますね。 患者さんによる吸気努力があるとき、気道内圧は低値ですみます。 逆に膨らまそうとしているのに、風船をぎゅっとつかまれたら、膨らましたくても膨らませません。 患者さんが息を吐くときに換気したら気道内圧はあがってしまいます。 咳き込んだりしたら、一気に気道内圧が上昇しアラームがけたたましくなることになります。 この場面はよく目にする場面のひとつでしょう。 一般に気道内圧が35cmH2O以上が持続するとバロトラウマ(barotrauma)の危険性が増すと言われています。 気道内圧上限アラームは、普通に換気しているときの最高気道内圧(PIP)の50%増しぐらいが適当だと書かれています。 仮にPIP 20cmH2Oぐらいだと50%増ししてアラームの設定値は30cmH2Oぐらいです。 あら・・・高く設定しすぎてるっていうところはありませんか? このアラーム設定圧に達すると、呼吸器は緊急避難の処置として呼気弁を開放して圧を逃がしてあげます。 じゃ心配しなくても大丈夫じゃん!と思うかもしれませんが、そうはいきません。 何度も呼気弁を開放していると有効な換気ができなくなってしまいます。 気道内圧アラームは一番重要なアラームなので、甲高いアラーム音です。 それが頻繁に鳴っているときは、その原因を取り除いてあげなければ、換気ができなくて大変なことになってしまいます。 最も多いのが、痰の貯留によるバッキングですね。 予断ですが、ファイティングとバッキングの違いはわかりますか? 簡単に言うとファイティングは呼吸器の設定する呼吸パターンとと自発呼吸の呼吸パターンの協調性が崩れた状態。 バッキングは咳嗽反射によるリズムの乱れです。 一口に咳嗽反射と言っても、その原因は沢山あります。 分泌物貯留、回路の水滴の流れ込み、気道の乾燥、挿管チューブやカフの違和感や刺激、細すぎるチューブ、不適切な位置、など。 気道内圧上限アラームが頻繁になるときには、原因を確かめて除去してあげることが重要です。 「痰は引けないんだけどねー。」で終わらせないってことです。 バッキング以外にも気道内圧上限アラームがなる原因には次のようなことがあります。 ・ファイティング 患者が呼気したいときに呼吸器が換気してくる。 これは吸気流速が患者のそれと違いすぎる場合や、一回換気量、I:E比、トリガーの設定が不適切である場合。 ・回路が屈曲して換気ができない。 ・挿管チューブが閉塞、または狭窄している。 ・無気肺の発生。大きな気管支が閉塞すると気道内圧は上昇します。 ・肺が固くなってきている。重症パラコート中毒患者などは見る見るうちに肺の繊維化が進みコンプライアンスが低下して気道内圧が上がってきます。 量を決めて換気するとき、(バードは通常このモードですね。)気道内圧がどれぐらいか?を常に気にしている必要があります。 呼吸管理を行っている以上、気道内圧を無視してはいけません。 「きちんと見ていますよ」という意味でも最高気道内圧(PIP)は記録に残しておく必要があります。 バードには気道内圧がデジタルで表示されませんので、本体の右端についているマノメータで見ます。 一瞬ですから、目を凝らしてよーく見てね。(数字がでるサーボやベネットはいいよなぁ〜。(-。-) ボソッ) 逆に圧規定の換気モード、PCVとかCPAPとかPSVでは、圧は一定ですから、換気量が変化します。 この圧の設定で一回換気量がどれぐらいなのか、見ていく必要があります。 この場合は換気量を記録に残しましょう。 さて、残りのアラームはスピードあげていきましょう。 気道内圧下限。 このアラームは結構ぞんざいな扱いを受けているのではないでしょうか? しかし、新聞に載るような重大な事故はこのアラームをぞんざいに扱ったがために起こっている場合が多いそうです。 気道内圧が下がる・・・つまり回路が外れている場合に鳴るのですが、このアラームが滅多に鳴らないような設定にしてあったり、オフにしてあると外れたことがわかりません。 気づくのが遅れれば、死に直結しますよね。 吸引操作などのために故意に回路を外すときは、あらかじめ消音ボタンを押してからすればいいことですので、きちんと適正な値に設定してください。 通常は最高気道内圧(PIP)の30%減です。 仮にPIP 20cmH2Oぐらいだと30%減じてアラームの設定値は14cmH2Oとなります。 このアラームは回路が外れたとき以外にも患者さんの吸気努力が強いときに鳴ります。 マノメータでは右側(マイナス側)に大きく振れます。 吸気努力が大きくなる理由にもいくつかあります。 設定の換気量が少ないので、「もっと息したい!」というとき。 発熱して酸素消費量が増えた、麻酔、鎮静剤が切れた、意識レベルが上昇した、低酸素脳症などで不隠、焦燥状態にある、などです。 また促迫で大きな呼吸をしているときも呼吸器が追いつかずに、このアラームが鳴る場合があります。 このような場合、患者さんの状態、望む呼吸をしっかり見極める必要があります。 モードを変える。換気量や吸気流速、トリガー感度を変える。場合によっては鎮静剤を増やしたり、ウィーニングを進めたりします。 いずれにしても看護師だけでは対処できないことが多いので、主治医に適切な報告をして指示をもらう(誘導する?)ことになります。 PEEP/CPAP圧下限。 PEEPがかかっているときは、トリガーしている以外、PEEP圧以下にはならないはずです。 CPAPの意味は、continuous Positive Airway Pressure で、持続的に気道に陽圧がかかっている状態です。 つまりその圧より下がらないはずなのです。 有効なPEEP/CPAPがかかるためには、その圧が下がった時点で注意を喚起する必要があるのでこのアラームがあります。(・・・と思う。) 実際には回路のリークなどを発見するのに使われることが多いかもしれません。 バード8400は、患者さんの吸気速度が早いと、その圧をキープするだけのフローを供給できずアラームがなることが多いです。 気道内圧下限と同時になることが多いですね。 分時換気量下限 分時換気量はどうやって求めるんだったでしょう? 1回換気量×換気回数ですね。 余談ですが(余談が多い・・・?)、CO2を有効にはかすためには、この分時換気量が指標となります。 つまり、高炭酸血症の場合は、1回の換気量を増やすか換気回数を増やして分時換気量を あげる必要があります。 1回換気量を増やすと気道内圧があがりますから、これ以上気道内圧をあげたくないって時は換気回数を増やします。 話を元に戻して・・・分時換気量=1回換気量×換気回数ですから、最低その量は確保できるはずです。 自発呼吸分も含めて、通常の分時換気量の50%減に設定するのがいいようです。 問題となるのは挿管チューブが細くてリークがある場合、ウィーニング中、PSVの時などです。 挿管チューブが細くてリークがある場合、設定した換気量が得られない場合があります。 特に肺が固い人とか伸びきった人はすーすーと抜けてしまいます。 こういうときはある程度患者さんが自発呼吸回数を増やして頑張ることがありますが、その力のない人は分時換気量が低下して高炭酸血症になりかねません。 適切な太さの挿管チューブに入れ替えて貰うか少しでもリークしない位置を探して固定するかなのですが、なかなかですね・・・。(先日苦労したばかり・・・) またウィーニング時、呼吸器で換気する量を減らして、あとは患者さんまかせの状態にしたときなども注意が必要です。 特にPSVの場合。 このモードは全ての自発呼吸に一定の圧をかけて呼吸を手助けする方法ですが、圧でコントロールしているので、一回換気量は呼吸ごとに変わってきます。 PSVの場合は低換気にならないように注意しましょう。 この患者さんの場合、いくら分時換気量があれば適正なPCO2が保てるのか、体格や血液ガス分析などから予測しておかなければいけません。 長期に呼吸器をつけている場合、鎮静中は睡眠や呼吸筋疲労などで分時換気量が減ってしまうこともあります。 しっかり息して!と声をかけたり、スクウィージングなどで呼吸補助をしてあげる、だめなら設定を再評価することになります。 分時換気量はCO2と関係してきますので、SpO2モニターを見て大丈夫!と思ってはいけません。 もしあればカプノメータを使用するのもひとつの手です。 換気回数上限と無呼吸 なぜ換気回数下限ではなく上限アラームなんでしょうか? 呼吸が減る場合の方が心配なような気がしませんか? 呼吸回数が減ったときのアラームは無呼吸アラームで対処しています。 換気回数は、呼吸と呼吸の間の時間をはかって計算して表示しています。 1分間に2回という換気回数を表示するためには30秒待たなくてはいけません。 それにチェーンストークス呼吸のように頻呼吸と無呼吸を繰り返す場合は呼吸回数が著しく変動してしまいます。 回数だけを追いかけていては、無呼吸時間というのはわかりにくいですね。 よって無呼吸というアラームを別に設けて、その対処まで呼吸器でしてもらおうという仕組みになっています。 あらかじめ設定しておいたバックアップ換気が作動するわけですね。 次の自発呼吸が始まったら、元に戻りますが、患者さんが楽だからと呼吸器に乗っかったらいつまでもバックアップ換気のままです。 これではいつまでたってもウィーニングは進みません。 必ずリセットボタンを押しておきましょう。 では、換気回数の上限アラームのある理由はなんでしょうか? 呼吸管理開始基準の中に呼吸回数が35回/分以上というのがあります。 換気回数が増えるということは、呼吸状態が切迫していると言うことを表しているんですね。 呼吸器をつけているのに頻呼吸ということは、呼吸器つけても楽にならないぞ! つまり設定がまずいぞ!ということに他なりません。 一時的な興奮状態や仕事量の増大によるものなら、安静にさせるなどの方法で対処できますが、それでもダメなときは鎮静剤を使用するとか設定条件を再評価する必要があります。 私たちはなぜ換気回数が増えているのか観察、アセスメントし報告する必要があります。 アラームの意味と仕組みを理解すると、呼吸器のことがよくわかると思います。 鳴りっぱなしにさせない。 また同じアラームだと過信しない。 ずっと鳴るなら、患者の状態に合わせてアラームを変更する、原因を除去する、設定を変えてもらうなどの対処が必要です。 最初にも書きましたが、アラームは医者のためにあるのではありません。 一番側にいる私たちが適切に看護し、危険を早期に発見、回避するためのものです。 アラームが鳴ったときの観察とアセスメントをしっかりして、必要に応じてアラームの設定値を変え、記録に残しておく。 わからないところはその都度本を開き、主治医と意見交換をしてくださいね。
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