■ 気道内圧を変化させるもの

 

現在、ポピュラーに使われている人工呼吸器は外からガスを押し込む「陽圧換気」方式でしたね。
1回に送り込むガスの量をどんなに少なくしても、外から押し込む以上、、気道内に圧がかかるのはやむを得ません。
ところが、「気道内にいつも圧がかかる状態」は、正常の呼吸では考えられないことですから人体にいいはずがありません。
一回換気量を最大にしてバコバコ景気よく押してあげれば患者さんが元気になるかというと決してそうではなく、逆に身体をいためてしまうことになるのです。
ですから人工呼吸をするときは、有効な換気をさせつつ、できるだけ気道内圧を低く保つことに注意が払われます。

ということは、私たちもいつも気をつけて気道内圧をみておく必要があるということですね。
気道内圧計はアナログ式、デジタル式の差はありますが必ず呼吸器についていますから、しっかり見るようにしましょう♪ 
一般的に 40cmHO以上は要注意といわれます。しかし絶対値ももちろん大切ですが、その患者さんの経時的変化というものも忘れてはいけません。

さて、さきほど「有効な換気をさせつつ、できるだけ気道内圧を低く保つ」と書きましたが、 そもそも気道内圧を変化させる要因って送り込むガスの量だけなんでしょうか。

実はいろいろな要因があるんですね。
大きく分けると患者さん側の要因と呼吸器の設定の要因のふたつがあります。

まず、患者さん側の要因として、気道〜肺胞の状態があります。
ひとつは、喘息のように気管支が細くなったり、痰がたまって気道の抵抗が強くなった場合は気道内圧が上昇します。
これは細いストローと太いストローを吹き比べたとき、どっちが楽か?と考えるとわかりやすいですね。
「楽」というのは抵抗(圧)が少ないということです。

それから肺線維症や加齢によって肺胞が硬くなっている場合も気道内圧が上がります。
(肺のやわらかさをコンプライアンスといい、硬い肺は『コンプライアンスが低い』と表現します。)
これは真新しい風船と使い古しの風船を膨らませるにはどっちが楽か?と考えるといいでしょう。

誰でも経験があると思いますが、真新しい風船は硬くてなかなか膨らみませんでしたね。

気道内圧に影響する患者さん側の要因は「気道抵抗」と「コンプライアンス」ということになります。

一方、呼吸器の設定条件の要因は・・・。
ひとつは最初に書いた一回換気量(V)です。
同じ風船だったら、たくさん膨らませた方(量が多い方が)が圧が高くなります。

もう一つは吸気流速。
同じ風船を膨らませるにしても、一気に膨らませるより、ゆっくりの方が楽ですね。

気道内圧に影響する呼吸器側の要因は「一回換気量」と「吸気流速」ということになります。

これまで勉強した量を決めて押してやる換気方式では(従量式とか定量式とか量規定式とかいいます)、呼吸器の設定条件でも患者さんの状態でも、気道内圧は変化します。
気道内圧が高い場合は、一回換気量や吸気流速を見直す必要があるかもしれません。
あるいは、モード(換気様式)そのものを変える方がいい場合もあります。


また同じ条件でも1回1回気道内圧は変化します。
痰の貯留で上昇している場合は、吸引が必要になるでしょうし、喘息なら薬剤の投与が必要かもしれません。相対的にジリジリと上がってくるようであれば、肺の状態が悪化している可能性もあります。
気道内圧は私たちにいろいろなことを教えてくれます。
しかし、その変化に気づきケアに結び付けるには、気道内圧を変化させる要因を理解し、経時的に注意深く観察し記録に残しておくことが必要です。

患者さんの体格、状態によって、どんな方法のどんな条件で呼吸管理してあげれば呼吸状態が改善し、しかも呼吸器による障害を最低限にできるか! これが呼吸管理の醍醐味です。
もちろん、私たちが設定するわけではありませんが、一番患者さんの近くにいるのは私たちです。
その評価には積極的に参加したいものです。


そうそう、気道内圧の一時的な上昇にはまた別の要因があります。
それは、患者さんと呼吸器の仲たがい。ファイティングが起きたときです。
トリガー感度や吸気時間などの設定が不適切だと、患者さんの呼吸したいタイミングと呼吸器の換気のタイミングが合わずに一時的に気道内圧が上昇することがあります。

さらによく見かけるのは、バッキングや痰が溜まって咳をしたときですね。
急激に気道内圧が上昇すると、甲高いアラーム音とともにバタンバタンという呼吸器の音が聞かれることがあります。これは、その圧を逃がしてやるために安全弁というものが開いているからです。


 


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