■ 従圧式換気⇔PCV

 

これまで、しつこく書いてきたように呼吸器を使うときは有効な換気をさせつつ、できるだけ気道内圧を低く保つことが大切です。

時代が「鉄の肺」から「陽圧換気」の呼吸器に変わるとき、最初に作られたのは気道内に 
設定した圧をかける従圧式換気という方法でした。
つまり一回換気量(V)を決めのではなく、最高気道内圧を設定し、その圧に達するまでガスを送り込み、圧に達したら呼気弁を開いて呼気を開始するという方法です。
このとき、「従圧式換気」ということばが生まれました。

ところが、前項で書いたように、肺の硬い人(コンプライアンスが低い場合)などは、気道内圧がすぐに上昇してしまい、吸気時間が短く一回換気量が十分保てないという欠点がありました。
換気量を増やすには設定圧を上げなければならず、それでも換気ごとの肺の膨らみ具合(換気量)が、まちまちで管理しにくかったのです。

そこで、考え出されたのが圧を最初に決めるのではなく、一回換気量を決める方法で、従圧式に対して従量式と呼ばれました。
その後、設定換気量に達したら呼気に切り替わるのではなく、時間を割り振って換気のパターンをつくる現代の方法に変わりました。
それが、最初に勉強した最も基本的な換気のしくみです。
この時点で、「従圧式」「従量式」ということばは 本来の意味を失ってしまっていたのですが、それからも漫然と使われ続けてきました。
 (なんて書きましたが、私がその時代から生きていたわけではなく、呼吸器開発の変遷みたいなものを
  まとめるとこうなるかな?というだけの話です。念のため・・・)

しかし、呼吸器が普及し幅広く使われるようになると、どうしても「陽圧」によるデメリットが目の前に立ちはだかります。
「 やっぱり最高気道内圧を固定できたらいいよなぁ。しかも出来るだけ低い圧で。
 そうだ!最初は設定圧に達したら呼気に転じるようなしくみだったから吸気時間がばらばらで
 換気量も  保証できなかったんだ。
 だったら、一気に設定圧までガスを送り込み、吸気時間を設けて吸気時間内はその圧を維持するようにしよう!!」

これがPCV(Pressure Controlled Ventilation プレッシャーコントロールドベンチレーション)です。
PCVも量ではなく圧を決めて換気する方法ですから、「従圧式」といえないこともありませんが、歴史的な背景からいうと、微妙に異なります。
ことばの定義が曖昧ですが、従圧式というのは、「設定圧に達したら呼気に転じる」というニュアンスが残っているのです。
そこで最初の「従圧式」と区別するために「定圧式」とか「圧規定式」とかいうことばを用いるようになってきました。
そして「従量式」はVCV(volume Controlled Ventilation)、定量式、量規定式とかいう表現も使うようになってきました。

「設定圧に達したら呼気に転じる」方式を採用した呼吸器は今ではもうほとんど作られていません。
ですから、 もう「従圧式」といったら、「吸気時間内、設定した圧を保つ」と思っても構わないのでしょう。
実際、比較的新しい呼吸器であるサーボ300でも「PCV」を「従圧式換気」と表現しています。
しかし、 人によって、あるいは読んだ本によっては、微妙に意味が違うことがあるということを頭の隅に入れておいた方がいいかもしれませんね。


さて、随分遠回りしましたが、PCVで必要な設定条件は、
吸気圧または調節圧(吸気時間中、キープしたい圧)
換気回数(
I:E比(もしくは吸気時間、呼気時間)
トリガーやPEEPなども必要によって設定します。

量を決める(量規定式)換気と違うのは、一気にガスを送り込み設定圧まで上げておいて、あとはその圧をキープするわけですから吸気相における吸気流速は大きく変化します。
この吸気流速は呼吸器によって自動的に制御され、換気量は測定値が示されることになります。
量を決める(量規定式)換気の場合は、気道内圧に注意しなければならなかったのですが、今度は換気量に注意しなくてはなりません。

このPCVは、特に肺の破れやすい小児に使われてきました
小児の場合、カフなしの挿管チューブを使うので、換気量を設定してもチューブの脇から漏れてくる量が体位などで変わりやすく、本当のところどれだけ入ったか当てにならないって理由もあります。
しかし、最近では成人にもどんどん使われるようになってきており、こっちが主流になるのではないかといわれています。
更に今後はPCVを軸としたもっと複雑なモードが開発され、患者さんに優しく看護師さんにはさらに難しいものになっていきそうです。 (;^_^A

それにしても・・・日本語って難しいですね。

 


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