「奄美・今里慕情」歌詞二番の意味と解釈
(二)
寄り木(ゆりぎ)寄り寄る(ゆりゆる)
 砂磯に
鳴いて
さすらう
鰹鳥(はぐれどり)
ウナリガミなら
加那尋(とぅむぃ)てぃ
 添えた情念(なさけ)と
虞美人草(ひなげし)を
波面(なみ)に
浮かべりゃ 
せめて 届けよ
沖の背に

(二)       
      
ゆりぎ ゆりゆる いそはまに

ないてさすらう はぐれどり

ウナリガミなら かなとぅむぃてぃ

そえたなさけと ひなげしを

なみに うかべりゃ

せめて とどけよ

おきの せに

   

語句の意味
寄り木   (よりぎ)・南島では海のかなたから集落の
      浜に様々な幸をもたらす物として、ユリムンが
      寄って来ると古くから考えられてきた。寄り木
      も、その一つ。方言では(ゆりぎ)。
鰹鳥     (かつおどり)・奄美大島では戦前、鰹漁
      が盛んで漁村の多くが鰹船で賑わい、えさ
      のきびなごを入れた、大きな竹篭生け簀がい
      くつも浮かび、集落の鰹の加工場でも、多く
      の女性が作業に従事していた。小さいながら
      夜の集落には漁師相手の花町もあった。鰹
      鳥はその頃の漁村のシンボルとでも言うべき
      鳥である。奄美大島の大和村の今里集落
      もそのような鰹漁で賑わった漁村の一つであ
      った。ここでは、かつての賑わっていた頃に
      飛んでいた鰹鳥が、時期違えのごとくに今で
      も集落の浜に来るのを「はぐれどり」として詠
      んでいる。
ウナリガミ 「おなりがみ」、奄美・沖縄では、古くから
      「兄弟」を守護するとされる「姉妹」の霊威
      のことを意味する。兄弟の「エケリ」よりも霊
      的に優先するので、「オナリガミ信仰」と称
      されている。つまりエケリの旅立ちには、オナ
      リガミの姉妹が海鳥に姿を変えて、船の周り
      を飛び回り航海の安全を見守ると考えられ
      た。
尋(とぅむぃ)てぃ
       尋(たずねる)。尋(たずね)て。
       奄美の方言では、現在でも、人や物を
       探すことの「トゥムィリィ」が使用される。
       尋(とぅむぃ)てぃは、探しての意味。
虞美人草(ぐびじんそう)
       虞美人は、項羽(こうう)の愛した虞妃(ぐ        き)のことである。古代中国の三国志の故       事に見え、項羽と劉邦(りゅうほう)の 最期       の戦いのとき、項羽は愛する虞妃とともに        劉邦の大軍にまわりを包囲された。 項羽        は別れの宴を開いてから最後の出撃をし、        虞妃もこの時に自刃して項羽に殉じた。
       この故事にちなむ花が 「虞美人草」
       である。
       北宋時代頃からは、一人の男性を思い通       す、女性の「貞操」の象徴として、「虞美人       草」を語ることがある。
       ここでは、そのような女性の「一途な想い」        を、「虞美人草」に託して詠んだ。
       別名 「ひなげし」             
ひなげし(雛罌粟)
       虞美人草(ぐびじんそう)は
       「ひなげし」(雛罌粟)だけではなくて、
       世界中で、別名
       「ポピー」(英米)
       「アマポーラ」(スペイン)
       「コクリコ」(フランス)
       などと呼ばれ親しまれている。
        罌粟(芥子:けし)科だが、
       「アヘン」は採取出来ない。
       ここでは、闘病の「鎮痛薬」としての、
       モルヒネの薬効を、 「ひなげし」の語
       に込めて、
       また、花言葉の「なぐさめ」を、
       「病気の癒し」
       つまり、「治癒」「完治」として、
       「恋の癒し」に詠み込んだ。