平成13年度鹿児島県大学図書館協議会研修会記録
                                          鹿児島県大学図書館協議会研修委員会

                                                    山之内理恵(鹿児島純心女子短期大学)
                                                    壽福千代子(鹿児島大学)

1.テーマ : 広報の手段としての魅力あるホームページについて
2.内  容 : 魅力あるホームページを作る前に広報戦略からの検討
           : 魅力あるホームページ構築のための方法論
3.講 師 : 川路  孝昭  氏(鹿児島純心女子短期大学)
    講  師 : 北山  信一    氏 (鹿児島大学)
4.日 時 : 平成13年12月17日(月) 午後1時30分〜午後4時30分
5.場 所 : 鹿児島大学附属図書館AVホール(5階)
6.参加者 : 11機関24名
7.研修会の概要
 今年度の研修会は「広報の手段としての魅力あるホームページについて」というテーマで開催
した。
 前半に「魅力あるホームページを作る前に広報戦略からの検討」ということで話していただき、
 後半は「魅力あるホームページ構築のための方法論」ということで実習も兼ねた研修を行った。
 以下、研修内容についてまとめた。

第1部(13:30〜14:45)

 広報の手段としての魅力あるホームページについて

はじめに
 今回、魅力的なホームページというのはどんなものか、広報の面より考えていくことにする。

1.企業の広告・広報活動

 まず、初めに、企業の広報活動を例にあげ、広報一般論から入ってみる。企業の広報活動では
「知らせる」「印象付け」という2つの行為をしている。まず、「知らせる」という行為につい
て考えてみる。たとえば、インスタントコーヒーを買いに店に入ると、同じ陳列棚に「ネスカフ
ェ」と「川路」という商品が並んでいるとする。客はどちらを選ぶだろうか。おそらく、客の
90パーセントは「ネスカフェ」という商品を選ぶだろう。なぜなら、「川路」という商品は全
く知名度がない。つまり、「知らせる」という行為が全くされていないのである。次に「印象付
け」という行為を考えてみる。先ほどの例を使って考えると「ネスカフェ」と聞いただけで「コ
ーヒー」、「おいしい」という印象をもつであろうが、「川路」という商品名だけでは、同じ印
象はもてない。これは「印象づけ」が全くされていないからである。以上のことから、企業が行
っている広報では2つの行為がなされているということを理解していただきたい。

2.図書館広報の課題

 1.をもとに、図書館の場合を考えてみる。図書館における広報活動の中で、たとえば、「図
書館報」がある。これに掲載しているものは事実報告であるが、しかし、その中で間接的に何か
伝えていることはないだろうか。「図書館利用案内」は図書館の利用方法を説明するためのもの
であるが、他に隠された目的はないだろうか。私達は、これらは発行することで「お知らせ」と
いう行為をしているが、他にも、「印象付け」という行為を無意識にしているのではないだろう
か。「図書館だより」に新刊案内を掲載するのは、「図書館に新しい本が入った」という「知ら
せる」という行為の裏に「図書館を使って欲しい」などという気持ちがあるのではないだろうか。
つまり、図書館広報は「知らせる」という行為と同時に「印象付け」という行為をしているのだ
と思う。
 しかし、これは無意識ではなく意識的に行うことが必要だと思う。図書館活動が活発な状況を
想定してみて欲しい。それはおそらく、多くの利用者が訪れ所蔵資料がたくさん利用され、また、
その中で利用者に「図書館は学習研究に役立つところ」、「図書館の利用方法や図書館資料の構
成を把握している」などの「印象付け」がされていて、その上で図書館内のサービス案内が充実
していて、検索指導も案内できているのが、活発な状況と言えるだろう。現在、私達はいろんな
手段を使って、図書館サービスの案内等をしているが、学生に「印象付け」がされていない状態
で図書館から一方的な説明をしても効果はないと思う。もしそれが行われていれば、説明等は利
用者にスムーズに入っていくであろう。これは「印象付け」というのが、広報活動の中で、一番
重要であるということを示唆している。それらは、図書館のカウンターや展示や広報などを使っ
て行えるものである。
 では、次に具体的にどのような「印象付け」をすればいいのかを考えてみる。ここで、事例と
して、目白大学のホームページを参照したい。ここで注目したいのは、目白大学では「建学の精
神」を言葉にして広報を行っているということだ。図書館の場合もこれがとても重要となってく
るのではないだろうか。どこの図書館もそれぞれ言葉にできるキーワードを持っているはずであ
る。それを見つけて積極的に情報を発信していくことが重要である。それが、広報活動の基本と
なる。また、次の事例とし、熊本学園図書館のビデオを参照したい。ここで注目したいのは、「
図書館宣言」を掲げている箇所である。どこの図書館にも共通する一般的なことを言葉にし「宣
言」として掲げ、図書館員全員が共有している。これはとても重要なことである。今まではアニ
メなどを使い、漠然と広報していたが、次の段階ではこのような「宣言」のような具体的なイメ
ージ作りが必要となってくると思う。これがこれからの図書館広報の課題となるであろう。
 さらに、その広報活動についてもう少し深く考えてみると、体系的にやっていくことが必要と
なってくるのではないだろうか。図書館利用教育ガイドラインにもあるように、図書館広報とは
何のためにあるのかは図書館の利用方法を紹介しているに過ぎない。図書館利用教育の中の、そ
れを実現するための手段が図書館広報であると思う。利用者教育と図書館広報とは同じものであ
り、体系的に行っていく必要がある。図書館利用教育の中で広報活動は、ひとつの方法で大きな
位置付けをするものである。こういう意識をたてて、「印象付け」を行い広報活動を展開して欲
しい。

3.魅力的なホームページ作成に向けての課題

 この流れにそって、今度はホームページについて考えてみる。今回の演題でもある「魅力的な
ホームページ」の中の「魅力」という部分を考えてみたい。この「魅力的」とは誰にとってのも
のなのか。それは利用者にとってのものだと考えるのが本来である。利用者にとって魅力的な中
身とはレイアウトにこだわることではなく、欲しかった情報をすぐに見つけることができ、探し
やすいものである。しかし、このホームページには致命的な欠点がある。それは、ホームページ
は見にきてもらって初めて情報を発信できるものであり、情報を発信するツールではない。この
ため、ホームページにアクセスしてもらわなければならず、やはりその前に「図書館のホームペ
ージにいけば情報が得られる」という「印象付け」がされていなければならない。といなると、
魅力的なホームページを作る前にしなければならないことは、図書館そのものが魅力的な活動を
していないといけないということになる。図書館員が作る図書館が魅力的でなければ、魅力的な
ホームページはできないのではないだろうか。そのためには図書館利用教育ガイドラインを参考
にして体系的に広報活動を実施し、その中で「印象付け」が一番大切となり、キーワードを作成
して共有していくべきだと思う。

4.総括

 最後に、魅力的なホームページとは魅力的な図書館につながり、その魅力的な図書館にするに
はどうしたらいいかということを考えて欲しい。レイアウトを勉強する前に図書館を魅力的にす
るために何をしたらいいかを考えて欲しい。これから何をしようかということを考えれば魅力的
なホームページが作っていけると思う。

第2部 (15:00〜16:30)

魅力あるホームページ構築のための方法論

1.「魅力あるサイト(ホームページ)」とは?

 ・ ユーザー(学生、教官)の心を引きつけるサイトである。
 ・ ユーザーがブックマークをつけるサイトである。

2.WWWの基本概念

 ・ WWWはURL(WWW上にある情報資源の場所)、HTTP(資源にアクセスするためのプロトコル)、
  HTML(ハイパーテキスト)3つの機構のうえに成り立っている。
 ・ クライアントがサーバーからファイルを入手、解析、表示、別のファイルやサーバーへのア
  ンカー(リンク先へ移動する仕組み)など、4つの工程がWEBブラウザソフトで実現されて
 いる。
 ・ WWWは情報の保管庫であり、管理者はサーバーに情報(ファイル)を用意しておくのが仕事。
 ・ 管理者側は資料をサーバーに置いているだけであって配信しているわけではない。
 ・ メールとは異なり、WWWはユーザー側からアクセスしなければ、情報を入手出来ない構造に
  なっている。従って、情報は得やすく、そしてユーザーにアクセスしたいと思せる情報が存在
  しなければならない。

3.魅力あるサイトを構築するための2つのキーワード

 ・ コンテンツ−提供内容そのもの
 ・ アクセシビリティ−アクセスのしやすさ・操作性
  WWWコンソーシアムのガイドライン(仕様書)がある 。

 Introduction to HTML 4  
  参考資料 
   http://www.w3.otg/TR/html4/intro/intro.html
   http://www.asahi-net.or.jp/~bd9y-ktu/html4rec_f/intro/intro.html

 Web Content Accessibility Guidelines 1.0 
  参考資料
   http://www.w3.org/TR/WAI-WEBCONTENT
   http://www.zspc.com/documents/wcag10

 仕様に従う事で、技術的にアクセシビリティの高いサイトの構築は可能である。しかしながら、
技術的に優れているサイトが、魅力あるものであるとは限らない。

4.魅力あるサイトを作る理由について

 ・ 図書館のプロモーション(販売促進のための営業活動)的側面がある。
  利用率向上、図書館活動の評価の向上、予算確保(の結果、データベース等の充実)など
 ・ サイトはコンテンツで構成され、サイト=プロモーションと言える。ここからコンテンツは
  商品であると捉える事が出来る。
 ・ 商品には顧客が存在するから、商品に対する顧客の満足度を考察する必要がある。

5.ユーザーの行動と満足度

 ・ ISO規格のユーザビリティの定義では、有効さ、効率、満足度、利用状況の4つの要素がある
  と定義されている。
   ユーザーの満足度を考慮しなければならない。同様にWWWサイト構築にあたってもユーザビリ
 ティ(WWWユーザビリティ)を考慮しなければならない。

6.ユーザビリティ
 ・ WWWユーザビリティについて
  「ユーザビリティエンジニアリング原論」Jakob Nielsen著のなかで学習しやすさ、効率性、記
 憶しやすさ、エラーの発生率の低さ、主観的満足度の5つの要素があると述べられている 。

  参考資料 
   http://www.useit.com:jakob Nielsen’s Website
   http://www.usability.gr.jp/alertbox/index

7.図書館サイトに求められる魅力の基準

 ・ コンテンツの豊富さ−ユーザーが欲しいあるいは図書館が見てもらいたい情報内容がたくさ
  んある。
 ・ 図書館員のスキルを活かした情報整理がなされている。
 ・ 情報の鮮度−古い情報・変更があっても更新されないサイトは信頼を失う。
 ・ 利用者の求める情報へ確実・簡単に導けるか? 

8.各加盟館サイトのコンテンツとユーザビリティのチェック

  ・ チェックシートにより各自パソコンで加盟館サイトのチェック、採点を行った。
  別紙チェックシート参照

  ・ 採点結果をもとに解説
 ・フレームの重複エラー
 ・操作性と学習性の悪さ
 ・デッドリンクについて
 ・コンテンツの少なさと工夫のしかた
 ・図書館員のスキルで作成可能なコンテンツの事例紹介
 ・効率的な操作性向上の工夫
  ・フレームの著作権侵害エラーについて

9.魅力あるサイトを構築する考え方

 ・ マーケティング− 動向調査をする、アンケート等による自己評価をする
 ・ 評価基準を持って作る −コンテンツ、アクセシビリティ 、ISOユーザビリティ、
  ウエブユーザビリティ
 ・ サイト構築の方針−対象となる顧客のニーズを知り方針を決める
 ・ 管理体制−評価しつつ、公開するコンテンツやサイト構成を考えていく
 図書館サイトに対する評価基準を持つことと、それをベースにしたコンテンツ作

[質問]
 フレームの著作権侵害について
 見本となるようなホームページを作っている大学のページの紹介
 
*研修の最後にアンケートを取らせていただいた。集計結果は別記のとおりである。


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