土作り (8月上旬〜、お盆・前後はお休み)
干拓かぼちゃクラブ(現在10農家、総面積約10町歩≒10ha)では、干拓地の稲刈り後の田んぼを使って栽培しています。
なので、戦いは早期水稲の刈り取りがほぼ終了した8月10頃から始まるのでした。
まずは堆肥投入です。2トントラックで100台ほど入れます。担当者は数日間朝から晩まで堆肥運びです。完熟に近い堆肥とは言え、1日中堆肥まみれだとやっぱり臭い。
同時進行で、堆肥散布、プラウ(鍬)による排水溝作りand畝(うね)上げ、基肥散布、耕運、マルチフィルム張りと続きます。もちろん、全て機械作業です。これまた一日中機械に乗ってるのもしんどいですな。
で、マルチフィルムを張り終わったところです。
「マルチ」とはマルチングの略で、株元の地面を覆うことです。(敷きワラも一種のマルチ)
素材や色や透明度で、その効果は様々です。
干拓秋かぼちゃで使ってるのはシルバーマルチ。雑草抑制、温度抑制に保湿効果、そしてアブラムシなどを寄せ付けにくい忌避(きひ)効果などがセットになった優れものです(多分)。
一列約90m、30cm間隔で播種用の穴が開いてます。
播種(種まき) (8月下旬〜)
今年は天候に恵まれず、ちょっと遅れて8月25日ごろ種を播きました。
品種は、大玉で甘みの強い定番の「えびす」と近年人気のある粉質系の「くりゆたか」。
一列約300粒。かぼちゃクラブ全体で150列弱あるので、45000粒ほど播きます。
腰が痛いし、気が遠くなるし、まぁ、大変です。
取り合えず、ここまでが全員で行う共同作業です。これより後は、農薬散布などの防除作業や台風対策、そして後片付け以外は個人作業となります。
8月下旬〜、発芽しました。 |
発芽から受粉まで (〜9月下旬)
私たち兄弟は今年33列栽培しています。
秋は春と違って気温が下がっていく一方なので、草勢が続くように親蔓のみの1本仕立てにします。(春かぼちゃでは、親蔓を4節くらいでつぶして脇芽を2本残す2本仕立てにしたりします。)
発芽した後は敷きワラをして、その後は誘引(蔓をまっすぐ伸ばす)と芽かき作業に追われます。
「えびす」も「くりゆたか」も草勢が強いので、節毎に脇芽が出てきます。この脇芽を摘み取っていくのです。これをほっとくと、脇芽はぐんぐん伸びてジャングルになってしまいます。混み合うと、葉は小さくなるし、光も充分届かないし、実も小玉傾向andキズ付きやすいし、何より作業がし辛い。ちょっとでも油断するとカボチャの勢いにどんどん手が回らなくなるという悪循環に陥ります。
予定では33列を4〜5日で回って4回転で芽かき作業終了のつもりでしたが、作業手順のミスや台風14号襲来に2〜3日を費やしたことで、33列1回転が1週間以上かかるようになり、それでも手が回らずにグチャグチャにしてしまったのが数列出てしまいました。誘引and芽かきは、基本で重要な作業なのです(と、今年も思い知らされた)。
芽かきのついでに、大玉生産を目指す為に、15節以上を目安にそれ以下に付いた雌花は取り除きます。
かぼちゃの雌花です。
花の下にちっちゃいかぼちゃが付いてます。
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播種から約1ヵ月後、花が咲き始めます。
この面積を人工授粉ではやってられないので、受粉マシーン:MITSUBACHI達を導入です。
いや〜、こいつら良く働きます。花を覗けば、1〜2匹は入ってますもんね。
サイボーグ・ミツバチの基地 |
加世田カボチャは熟度が大事なので、受粉から収穫までの日数をはっきりさせる為に受粉期間を1週間位みて、それ以降に付いた雌花はまた取り除いていきます。
秋は基本的に1蔓1果取りなので、実が付いたらそこから10枚くらい先まで葉を残して蔓の先端を落とします(切り取る)。
ここまで来れば、ひと段落です。(ここまでほとんど休日なしです。とほほ。)
台風対策and病害虫防除
秋かぼちゃの難しさは何と言っても台風とどう付き合うか、です。
来なきゃ幸いなのですが。
台風対策。
幅4m、4mm目の防風ネットで覆ってあげます。
風はこれで大体OKなのですが、問題は大雨による「水」。
干拓は水田で、更に低地なので簡単に水没してしまいます。
この水が厄介。準備できるだけのポンプで水を汲み出します。
でも、相手は強大な自然なので中々です。
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病害虫防除は機械をレンタルして行ってます。共同で大規模に耕作している利点ですな。
機械の導入でかなりの労力減です。
とは言え、環境的にも健康的にもコスト的にも
極力回数を控えたい所。
農協や農業普及センターのバックアップの基、
早め早めの予防防除を基本に適宜農薬散布を行います。 |
摘果(てっか)andフルーツマット敷き (10月中旬)
実がソフトボールくらいの大きさになったら「フルーツマット(Fマット)」ってのを実の下に敷きます。キズ防止と、透明なプラスチック製なので実の裏まで光が当たって全体が緑色に染まる、っていう効果があります。つまり、かぼちゃに付きものの一部オレンジ色に染まる部分が出来ない。
昔は、表に色が付いた後に実を一度ひっくり返す「玉なおし」って作業をしていたそうな。大変ねぇ。
Fマット敷きのついでに、2〜3個なってるものは良い実を1個だけ残す「摘果」作業も同時に行います。
受粉から約1ヵ月後。
かぼちゃの下にあるのがFマット。
ペットボトルのリサイクル品で、1枚15円もする。
約1万枚ほど持っているので、総額・・・・ |
ちなみに、かぼちゃのあのオレンジ色は、何と中の身の色です。熟度の目安になります。
黄色いのはあまり熟してません。硬くてしっかりしているので天ぷら等に最適。
オレンジが濃いほど熟してます。甘味が増してほくほくしてるので、煮物が最高!
日焼け防止 (11月〜)
発芽から2ヶ月も経つと、葉っぱも寿命を迎えて根元側から枯れ始めます。
しかも、大浦干拓は北に海が開けているので、この頃になると北風が強くて余計に葉っぱにダメージが加わります。
日差しをさえぎる葉っぱが無くなって、色の濃くなった実に直接強い日差しが当たるようになると日焼けしちゃいます。ひどいと中が煮えて商品にならなくなります。
そこで、日焼け防止に新聞紙で作った帽子を被せてあげます。完熟でなくてもよければ、日焼けする前に出荷できるんですけどね。
一昨年の収穫直前の頃。白いのは新聞紙に包まれたかぼちゃ。
葉っぱはほとんど残りませんでした。
一応、風対策に畝の周りにソルゴーを植えてあったんだけど。。。
今年はこんな感じでまだ葉っぱが残ってます。
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収穫 (11下旬〜12月上旬)
熟度判定の試し切りで合格が出たら、待ちに待った収穫です。
やっぱりこれが一番楽しい瞬間ですね。4ヶ月間の苦労が吹っ飛びます。品物が良ければ尚更です。
運搬車で運んでタオルできれいに拭いて専用のコンテナに詰め込みます。
1コンテナ当り小玉で10数個、大玉で6〜8個程度入ります。
ある程度たまったら農協の集荷場に運びます。僕らの仕事はここまでです。
一旦集荷場に集められたかぼちゃは、加世田のかぼちゃ選果場に送られます。
そこで熟練さんの目と機械によって品質、大きさ毎に分けられ、箱詰めされて出荷されます。
以前は農家が手作業で一個一個選果して箱詰めしていたとか。
大変な労力だったことと思います。
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今年は、33列約9500株で「えびす」が約400コンテナ、「くりゆたか」が約300コンテナでした。
台風の影響がなければまだ収量が上がったはずなのですが、そこが秋かぼちゃの博打的な部分で難しい所です。去年は台風4発でほぼ全滅でしたしね。
後片付け(12月〜1月)
収穫が終わったら、後片付けに入ります。
メンバーには中旬から収穫の始まるポンカン農家も多いですので、寒かろうがみぞれが降ろうがばたばた進めなければなりません。
ハンマーモアによるソルゴーand南瓜蔓の粉砕、プラウによる鋤(すき)戻し、耕運と続きます。
干拓は水田ですので、残渣(ざんさ)も少なくなった頃レーザーレベラーによって均平化を行います。
通路などに設置したレーザー発光器からのレーザー光を捕らえて
常に同じ高さに保たれた作業機を引き均平化していきます。
便利で使える機械ですが、高価なのでちょっと個人では持てないですな。
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最後に軽く仕上げの耕運をしたりしなかったりして、今年の秋南瓜終了です。
よかったよかった。
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