GPS利用 高精度タイムインポーザ

GHS−OSD


GPSシステムの週番号ロールオーバーに伴う誤動作について
2019年4月7日に米国国防総省の運用するGPSシステムの時刻情報が初期化(週番号のロールオーバー)されたことにより、受信機が誤動作するトラブルが発生しています。 これは、日付情報と秒の値が狂うもので、GHS-OSDにおいても、内蔵する受信機が Garmin社の「GPS15xシリーズ」のもので異常が報告されています。
この問題の原因・症状・対策について、ドキュメントをまとめましたので、ご参照ください。
GHS-OSD内蔵Garmin社 GPS15x 受信機のファームウエア更新マニュアル(PDF)
なお、早水の設計した、他のGPS時計「マイコンGHS時計」「GHS15時計」「GPS-CORO」では、 他の受信機を採用しており、これまでのところ異常は報告されていません。
(2019.4.16)


GHS-OSD は、GPS受信機の生成する高精度の時刻情報と経緯度情報を、内蔵する液晶表示器 とLED表示器に出力します。また、外部からの映像信号にスーパーインポーズ(On Screen Display)する装置です。 GHS-OSD は、かつて考案された GHS時計 と TIVi を統合した機能を有します。

* "GHS" は、GHS時計の共同開発者である"下代(Geshiro)","早水(Hayamizu)","相馬(Soma)" の頭文字です。 "OSD" は、"On Screen Display" を意味します。

■ GHS-OSD の仕様

(1) GPS受信機
  Garmin GPS-15xH/15xL シリーズ
(2) 入出力器
  * 液晶表示器(LCD)16文字×2行/バックライト付
  * ビデオインポーズ(OSD)
  * 音声出力(Line Out)
  * 2桁7セグメントLED
  * 赤LED
  * 圧電スピーカー/音量調整ボリューム付
  * USB出力(仮想シリアルポート)
(3) 精度(GPS受信機の仕様より)
  * 毎正秒の時刻精度: ±1μ秒 (=0.0000001 秒)
   インポーズされる正秒間の精度は、内蔵している水晶発信器で生成しているために、
   ビデオの1フィールド(1/60 秒)以内の誤差がありえます。
  * 位置精度: ±15m (95%確率)
(4) 映像仕様
  * NTSC 映像規格対応
  * 外部映像/内部映像(ブルーバック)自動切換え
  * 入出力端子:RCAジャック
(5) 電源
  * DC6〜15V(標準DC12V)

GHS-OSD の時刻精度の検証
  GHS-OSD によりインポーズされる時刻の精度を、Limove を使って評価してみました。


■ GHS-OSD の外観

本体正面本体と付属品
側面1 / ビデオ入出力コネクタ側面2 / 電源,アンテナ,USB のコネクタ


■ 液晶表示(LCD) の表示例

メニュー1
* 時刻情報/時,分,秒
 時刻は、世界時(UTC) と日本標準時(JST) を切替え可能
* 経緯度/最小桁 0.1秒
# 左の例では、「00h 38m 37s UTC, 東経 130o 17'57.5" 北緯 31d 50' 19.6"
メニュー2
* アンテナ高さ(標高),衛星補足数,HDOP値
* ジオイド高さ,測地系,Quality値
メニュー3
* 推定誤差(水平方向,高さ方法)
* GPS受信機型式
メニュー4
* 署名


■ ビデオインポーズ(OSD) の表示例
この例は、実際に外部映像として天体を映した場合のものです。GHS-OSD は、外部映像が入力されていない場合でもブルーバック映像を生成し情報を表示します。
表示の位置は、画面の任意の位置に変更することができます。
時刻は、世界時(UTC) と日本標準時(JST) を切替えることができます。

衛星非補足時
GPS衛星が補足されるまで傘マークを表示
メニュー1
年月日,時分秒,最小桁 0.001秒
メニュー2
時分秒,最小桁 0.001秒
メニュー3
秒のみ表示,最小桁 0.001秒
メニュー4
経緯度,最小桁 0.1秒
メニュー5
非表示


■ 公開データ

"GHS-OSD" は、天文普及を目的としてスタートしたプロジェクトであるため技術情報を公開しています。 これらの情報はどなたでも自由に閲覧し利用していただいて差し支えありません。

このページの情報の利用により、いかなるトラブルが発生しようとも一切の責任を負いません。
このページの情報やスペックは予告なく変更することがあります。
商品としての販売は致しません。このページの情報を利用して自作されることを歓迎しますが、製作は自己責任にてお願いします。
このページの情報の著作権は早水が所有します。商用としての利用はご遠慮下さい。

GHS-OSD 接続図
天体観測で GHS-OSD を使用する場合の接続図です。

GHS-OSD 回路図 (PDF:216KB) (更新:2011.8.19)
制御中枢のマイコンの HEX データも、将来公開するつもりですが、まだ公開するほどの実績も自信もありません。 ご入用の方にはプログラム入力済みのマイコン実費にてお分けします。ご連絡先
GPS受信機 "Garmin 15xH/15xL" データシート (PDF:953KB)
インポーズIC "NEC uPD6464A" データシート (PDF:599KB)

GPS受信機 Garmin GPS15xH/15xL の設定
採用するGPS受信機 Garmin GPS15xH/15xL を GHS-OSD に接続するためには、専用のコンフィグレーションソフトを使って カスタマイズする必要があります。パソコンとの接続は、受信機のデータシート 7ページに記されています。
GHS-OSD の回路に接続したままでも USB 経由でパソコンと通信できるだろうと思いますが、その場合はデータの混線を防ぐためマイコンを抜いた状態で行ってください。
GPS受信機 "Garmin 15xH/15xL" コンフィグレーションソフト(SNSRCFG_xxx.exe) Garmin社のサイトへジャンプ
GHS-OSD用 コンフィグレーションデータ(SNSRCFG.cfg) (右クリックして保存してください)
使用する NMEAメッセージ...「GPGGA」「GPRMC」「PGRME」「PGRMM」「PGRMT」の5つ

GHS-OSD 取扱説明書 (PDF:146KB) (更新:2011.8.19)


■ パソコンとの接続

USB接続による仮想シリアル通信(VCP)にてパソコンと接続することが出来ます。 パソコンとの接続は必須のものではありませんが、GPS受信の発する情報を直接パソコンで取り扱うことが出来るようになります。

USB接続による仮想シリアル通信は、秋月電子通商製 FT232RL USBシリアル変換モジュール を採用しています。ドライバの供給元は FTDI社 で同社の Webサイトからダウンロードできます。 Windows Vista 以降のOSでは、USB接続基板をパソコンと接続すると、専用IC FT232RL が認識され、自動的にインストーラーが起動するようです。(未確認)

Satk との接続

対応するソフトウエアとしては、”Satk(さとくん)” (瀬戸口貴司氏 作) があります。
右は "Satk" の稼動中のウインドウです。 インストールはじめ使用方法は、前述の取扱説明書の中に記述しています。


ステラナビゲータ との接続

ステラナビゲータには、GPS情報を取得して、現在地や時刻を自動的に修正する機能があります。 このような機能も GHS-OSD をパソコンと接続することにより利用することが出来ます。
右図は、ステラナビゲータ ver.9 と接続したときの GPS 設定画面の例です。ステラナビゲータの設定条件では 「ビット/秒」(ボーレート)は、デフォルトは「9600」となっています。GHS-OSD と接続する場合にはGHS-OSD Ver1.2 までは「4 800」に変更する必要があります。Ver1.3 以降は 「9600」です。

他の通信ソフトとの接続

ハイパーターミナル等の他の汎用通信ソフトと接続する場合も、前述のステラナビゲータとの接続の設定条件に準じてください。


■ エラータ

現在までに判明している不具合情報です。

(1) LCD(液晶)メニューが メニュー2,メニュー3 で稼動中に、マイコンがリセットされることがある。
現状では原因不明。このため長時間稼動したままにで観測する時には、液晶をメニュー1 にすることとお勧めします。 もしマイコンのリセットが発生すると、自動的にメニュー1に戻ります。(OSD は設定されたメニューが保持されます。)

(2) GPS受信機の発するデータに秒の値が1秒異なっているケースのあることが分かっています。 ただちにGHS-OSD の時刻情報を過信せず、観測の開始時と終了時に、電波時計やNTTの117時報など 他の時報で異常のないことを確認してください。 電源投入直後は、1秒程度時刻がずれる場合がよくあります。空の開けたところにアンテナを設置し、 10分程度連続稼働して安定させて下さい。その後も異常が確認された場合には、 電源を再投入して受信機をリセットしてください。 なおこのような場合でも、毎秒の開始タイミングは、±1μ秒 程度の高精度で同期していることが確認されています。

(3) 外部映像が入力されているときに、スピーカー音がにごる。現状では原因不明。


■ 謝辞
GHS-OSD の開発におきましては、唐崎秀芳さま,高島英雄さま,石田正行さま,渡部勇人さまに貴重なご意見を頂きました。 敬意を込めまして、ここに御礼申し上げます。


文責:早水 勉
技術的なお問い合わせは こちら までどうぞ。

更新履歴
2019. 4.16 : GPSシステムの週番号ロールオーバーに伴う異常について掲載。
2017.11.25 : 「Satk(さとくん)」のリンク切れ対応。瀬戸口氏のドキュメントをサイト内に移植。
2012. 1.27 : 「パソコンとの接続」のボーレートに「Ver1.3 以降は 9600bps」を追記。
2011. 9.29 : 「パソコンとの接続」に「ステラナビゲータとの接続」「他の通信ソフトとの接続」を追加。
2011. 8.19 : 「暫定版Web」を削除。「GHS-OSD 回路図」をさらに修正。「取扱説明書」を正式版に更新。謝辞を追加。
2011. 5.23 : 「GHS-OSD 回路図」を微修正
2011. 5.15 : 「GHS-OSD の時刻精度の検証」を追加
2011. 5.14 : 「公開データ」に GPS受信機 Garmin GPS15xH/15xL の設定 を追加
2011. 5.11 : 一部記事の表現を誤解のないように修正
2011. 5.10 : 暫定版 Web 公開