山門ぶどう園便り 2005年7月20日
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出水市観光協会推薦   山門ぶどう園

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    ○ 巨峰              ・・7月中旬〜9月
    ○ ロザリオビアンコ(マスカット) ・・8月〜11月
    ○ 甲斐路・セキレイ(赤嶺)    ・・8月〜12月

 花が咲いて実になったことを、「とまった」とか「実どまりした」とか言います。 ぶどう生産農家は、一年中、心配事ばかりですけど、 花が咲き始めてから実どまりするまでの仕事が、 なんと言ってもメインイベントです。 その年の出来が決まります。 粒の大きさや、美味しさは、肥料を頑張って撒いたり、 日に当てたり、摘果、粒間引きで量を減らしたり、 いろいろと工夫できますけど、 それもこれも、花が咲くときに、ちゃんと実どまりさせることができてからの話です。 ぶどうの花を咲かせるのは、年に1回だけで、 やり直しは無いのです。

 右端の写真のように実どまりしたことを、「有核でとまった。」と言います。 どの粒にも種が入ってて、日に日に、目に見えて粒が大きくなります。 大豆くらいの大きさになるまでに、何日もかからないです。 そんな有核の房ばかりになるように、 枝の成長ではなく花が咲くために養分が使われるように肥料をやったり、 花芽に日が当たるように枝の位置を変えたり、 昼の温度が上がりすぎないように、夜温が下がらないように、 湿気が多すぎないように、風の通りが良くなるように、 地道にビニールハウスの喚起窓を開け閉めしたり、 「晴れてくれ〜」と空を見上げたり、いろいろやってるんですけど、 木の状態は1本1本違いますし、 全部の房が上手く実どまりするってことは、ほとんどありません。
実どまり 実どまり 実どまり
 花が咲く時期に木の勢いが強すぎたり、 曇りや雨の日が続いて、お日様に当たることが少なかったり、 夜温が低かったりすると、種の入ってない無核の粒が、 たくさん混ざって実どまりすることがあります。 これを「単為結果(タンイケッカ)」と言います。 この種の入ってない小粒は、 いつまで経っても大きくならなくて、 色着くのが早くて甘いことは甘いんですけど、 甘いだけと言えば甘いだけのようで、 それに、果肉がやわくて食感が良くないものですから、 粒間引きするときに全部取り除きます。 こうすると、5粒、10粒だけの房になることもありますけど、 単為結果になるってことは、木が元気良すぎるってことなので、 この残った有核の粒は、 たくさんの粒が有核で実どまりした房の粒よりも大きくなります。 なんとなく、より美味しい、ような気がします。
 ぶどう園によっては、房型を重視したり、手間(経費)を考えたりして、 少々の小粒をくっつけたまま、ぶどうらしい房型を維持するとこもありますけど、 「良い房を作るんじゃなくて、美味しい粒を作るんだ。」 という考え方でやってますから、 有核の房の粒間引きのときも、粒の大きさをそろえるように、 小さめの粒を全部間引きます。 ですから、ぶどうっぽい房型してないものが多いです。

 枝が重なったり、枝の勢いが強すぎたりすると、 棚が葉っぱで覆われてしまって、花に日が当たらなくて、 花が咲いても実にならずに、 黄色く枯れかけた心棒だけ残ったりすることもあります。 花が咲いた後は、小さな粒にはなってるんですけど、 そのままパラパラと落ちてしまうんです。 こういうのを、「流れた」とか、「ふるうた」とか言います。 実が生ってない強い枝を残しておくと、 その枝ばかり栄養をとって伸びて、 他の実が生ってる枝が伸びませんから、 全部の花が流れてしまった枝は、枝ごと切り落とします。

 一房全部の花が流れなくても、 5粒、10粒くらい有核で実どまりして、 他の粒は流れてしまうこともあります。 花が咲くときに曇りの日や雨の日が続いたりすると、 10粒くらいの房は、まだマシな方で、 あんまり贅沢言えない年もあるんです。 そんなときは、10粒の房でも残しておいて、 落ちた粒の分まで残った粒に大きくなってもらって、 それなりに見栄えのする房になってもらえるように、 頑張って仕事します。

 1枝に1房〜3房の花を咲かせますけど、 花が咲き終わって、有核と無核の区別がつくようになったら、 粒間引きする前に、1枝に1房だけ生らせるように、 房ごと摘果(てっか)します。 房型が良くて、粒数が多くて、小粒が混じってなくて、 キズの入った粒がない房を、 ...できるだけその条件に近いのを1房だけ残して、 他の房は、全部切り捨てます。 同じ枝に咲いた花ですから、同じような環境で育ってるわけで、 似たような房になることが多くて、 両方良かったり、両方ダメだったりで、なかなか選べなくて、 ハサミをウロウロさせてます。 両方ダメなときは、有核の粒の数を数えて、多い方を残します。 残したい房ばかりの枝と、残したくない房ばかりの枝が近くにあると、 こっちの枝から1房切り取って、あっちの枝に持って行って、 接着剤でくっ付けたくなります。 ...そんなことはできませんから、 この時期、地面には、大きな房も、小さな房も、たくさん落ちてます。 次に回るときは、枝の強さ、葉っぱの色、それに、粒の太り具合を見ながら、 悩んだ末に残した1房を切り落とすこともあります。

 花が咲く前に、花房切りなどの仕事をする前に、 1枝に1つの花芽だけを残して、 他の花芽を切り捨ててしまえば、 花が咲く前の仕事量は、1/3くらいになって、かなり楽になるんですけど、 天候次第で、単為結果や流れたりするのが多いと、 その後の仕事も収入も無くなってしまいます。 毎年来てくださるお客さん達のぶどうも、無くなってしまいます。 そんなことにならないように、 安定した収穫量と質を確保するために、 実どまりを確認するまでは、たくさんの房を残したまま、頑張って仕事するのです。