この女性は今何を考えているのだろうか? 主に内緒で出掛けようとした矢先呼び止められ、小言を仕方なく聞いている場面? 或いは旅先で迎えを待っている場面?或は今から何か云いにくいことを言い出そうとしている場面? 鑑賞する人によっていろいろなイマジネーションを沸き立たせる作品である。

ナビ派の画家ボナールは、黄色を基調として構成した画面の中で、見事に紫を補色として使いこなし、 それに赤や青、緑を加えて豊潤な色彩のハーモニーを描き出すことから色彩の魔術師と評されている。 また、彼は日本の浮世絵版画から色彩や画面構成の多くを学んでおり、同じ画家仲間から 「ナビ・トレ・ジャポナール」(日本びいきのナビ)と呼ばれたという。

ナビ派の画家達は、絵画を平面的装飾品として位置づけ、その中にあらゆる感情を表現することを模索したと いわれるが、この作品の至る所に彼が追求した色彩の特徴、鑑賞者の心に問うナビ派の特徴、そして室内情景や 日常生活の近辺にモチ−フを求めた、アンテイミスト(親密派・内景派)としての特色を鑑みることの出来る逸品 である。

『座せる婦人』ピエール・ボナール
1867年生1947年没
74×63cm
《参考文献》 週刊アートギャラリー ボナール(2001/4)
ボナール展カタログ(1980 読売新聞社発行)
ボナール展カタログ(1997 愛知県美術館)
世界の名画ボナール(中央公論社刊)
朝日新聞鹿児島版 「うちの収蔵品」オリジナル原稿 より
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