軟らかな木漏れ日が、木々の間を縫うようにつながる一本の 山道を照らしている。鳥の囀りも木々のざわめきも何もない静寂の空間そんな言葉が似合う作品である。

今日我々はこの作品の作者クールベを、西洋絵画近代化の源となった人物として、高く評価しているが、 彼の人生それは激動であり、挑戦であったともいえよう。

彼が画家を志した1840年代のパリ画壇の主流は宗教画や歴史画であり、彼が描く現実を題材にした絵画は、 別の「低いジャンル」とみなされ、サロンへの出品も安易に受け入れられるものではなかった。

1855年、パリ万博に出品した14点の作品全てが審査拒否となり、 中でも「画家のアトリエ」「オルナンの埋葬」が彼の主義を批判する最も激しい的となった。 これをきっかけに彼はついにそれまでのパリサロンを覆す策に出る。彼は会場近くで彼独自の個展を開き自らを レアリスト(写実主義者)として、ありのままを描く事の意義を説いたのである。そしてその試みが後の印象派と 呼ばれる画家達にも支持をされることとなり、一気に西洋絵画の近代化が始まるのである。

『森の風景』ギュスターブ・クールベ
1819-1877
油彩・キャンバス・24.0×19.0cm
《参考文献》
朝日新聞鹿児島版「うちの収蔵品」オリジナル原稿 より
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