平成20年度鹿児島県大学図書館協議会講演会記録

鹿児島県大学図書館協議会研修委員会

 

 

テーマ: 「教育著作権セミナー −教育関係者が知っておきたい著作権−」

講 師: メディア教育開発センター 尾崎史郎教授

日 時: 平成201024日(金)13301600

場 所: 鹿児島県立短期大学附属図書館 2階視聴覚室

参加者: 56名(内県立図書館1名、市立図書館2名)

 

 

講演内容

 要旨は以下のとおり。(当日配布資料に基づく)

 

○知的財産権の中の著作権

    著作権は知的財産権のひとつ、他に産業財産権、その他がある。

 

○著作者の権利

    著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である。

    単なるデータはそれ自体は著作物ではない。データを加工した図表は表現に創作性があれば著作物になり得る。

    思想(考え)は著作物にならないが、文章等にした場合に著作物となり得る。(表現したものを保護する)

 

○著作物の具体例

    著作権法第10条第1項に例示されているとおり、講演、論文、ダンスの振り付け、写真などがある。(ただし、スピード違反取締用写真や防犯カメラに撮影されたものは著作物にならない) 

    既存の著作物に新たな創作性を加味して創られた著作物(たとえば、英語で書かれた論文を日本語に「翻訳」する、など)→ 二次的著作物(原作者の許可が必要)

 

○著作者とは・・・「著作物を創作する者」のこと

 

○著作者の権利の内容

    著作者は著作人格権と著作権(財産権)を有する。著作物を創作した時点で自動的に発生する。

著作者人格権・・・公表権・氏名表示権など 著作権・・・複製権・上映権など

    作成委託や資金提供等を行っただけでは著作者とはならない。会社や国の職員などによって著作物が創作された場合、要件を満たせば会社や国が著作者となり得る。

(たとえば、大学入試問題や業務用プログラム等は法人名義)

    著作物と発明物では取扱いが違う。 例)「青色発光ダイオード」

    保護期間 

著作者人格権・・・著作者が死亡すれば権利も消滅する

著作権(財産権) 著作物の創作時に始まり、著作者の死後50年までが原則(例外あり)

  ・ 著作権の許諾について・・・著作者と著作権者が同一とは限らない。(著作権は譲渡できるので、著作権者の許諾が必要)

 

○著作隣接権・・・著作権を公衆に伝達する者(実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者)に与えられる権利

    保護期間

実演、放送、有線放送:行ったときから50

レコード:発行後50

 

○権利制限(許諾なしに著作物を利用できる場合)

   著作物を利用する場合には許諾を得るのが原則だが、要件を満たせば、許諾なしに著作物を利用することができる。→教育関係など(図書館含む)

    教育機関における複製、公衆送信、試験問題としての複製・送信などは条件付で認められている。(非営利、無料、無報酬の場合、利用の様子をHPなどに掲載するのは不可、など)

    図書館等における複製・・・公共図書館などでの複製を認めるもの(大学などの高等教育機関、博物館など)→小・中・高の学校図書館は不可

その他営利を目的としない事業、図書館の保管資料が対象であって、持込資料は不可など、要件あり。

 

○著作権の利用

    著作物の利用に当たっては、利用の許諾を得るのではなく、著作権の譲渡を受ける方法もある。

 

 ○権利が侵害された場合の措置

    刑事的救済・・・10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金

    民事的救済・・・差止請求、損害賠償請求など

 

 

 質疑応答

   活発な意見交換がなされた。

    一般の写真や絵画を使ったコラージュ作品について。

    絶版の本の場合、全ページ複写して授業で学生に使用させてよいか。

    入試問題に使用する時の注意点について。

    その他