平成16年度鹿児島県大学図書館協議会第1回研修会記録

                                         鹿児島県大学図書館協議会研修委員会


1. 日 時 : 平成16年11月29日(月) 15:00〜17:00
2. 場 所 : 鹿児島大学附属図書館5階AVホール
3. 参加者 : 17名
4. 概要
今回の研修会は、参加者全員による班別討議形式であった。
各班毎に以下の2つのテーマから好きな(または両方)を選択し、ディスカッションを
行った。
 1. 新しい大学図書館の機能と運営
  2. 情報リテラシー教育のあり方

○ 進行要領
1. 研修生は3つのグループに分かれる
2. まず、それぞれの役割分担を決める(研修委員会推奨のままでも構わない)
3. テーマを1つ(2つでも可)選択する
4. テーマの趣旨について確認する
5. テーマについて、各班毎に自由にディスカッションを行う
   インターネットに接続可能なパソコンを1台用意するので、利用可とする。
   記録担当は、ディスカッションの過程を記録する
6. ディスカッションの結果(要旨)をまとめる
7. 発表者は、ディスカッションの内容(要旨)を発表する
8. 要旨は、グループ毎に1部を研修委員会に提出する

○ ディスカッションを行うポイント
・ まず、テーマの趣旨をよく理解すること
・ テーマに関連する各大学での業務の事例等を紹介する
・ 日頃、疑問に思っている事等について述べる
・ 他大学の事例について、疑問に思った点や興味の湧いた点等について相互に質問する
・ 講演の内容等も踏まえながら、様々な観点から意見を述べてみる
・ オブザーバとして、講演会講師にご参加頂けるので、助言などがあれば、それを参考
にする。また質問があれば自由に行ってよい


○ 注意事項
・ 直接各大学の業務を改善しようという趣旨ではないので、「個人の意見」を自由に発
言することに努める
・ 発言者の意見を尊重し、批判等は行わないこと
・ 司会者は、時間配分に気をつける
・ 発表者の負担が大きいので、記録係を中心に、各グループ共、発表しやすい内容にま
とまるよう協力する

各班の記録は、下記の通り、発表者によりまとめていただいた。

(第1班)
第1班は、2つのテーマについて意見を述べ合った。
(意見はそのまま記録)

1.テーマ1 新しい大学図書館の機能と運営

・ いま図書館は「図書館活動の内容を周知させること」、また「図書館の広報を学内か
ら活発に発信すること」が必要なのではないか。
・ 図書館を運営するうえで、新しいサービスの展開を考えなければならないが、これは
目先のものではなく、中期、長期にわたる年次
計画をたてて活動することが重要である。また、その年次計画は、学内の教職員、学生に
公表したほうがよいのではないか。
・ アウトソーシングの体制(全面、一部)を取り入れている大学図書館もでてきたが、
既存資料をデータ化する業務は、その図書館でしかできない内容のものである。
・ 図書館のホームページは、おおいに効果がある。
それに伴い、図書館の哲学性も出るので、外部委託するのではなく、やはり学内、または
館内で作成するほうが望ましいのではないだろうか。
・ 熊本大学では、今年度より全学部の1年生のカリキュラムに「図書館ガイダンス」とい
う講義を取り入れたことを聞いた。このこと
により4年間の学生生活のなかで図書館、また資料をうまく活用してほしい趣旨があるとの
こと。
 
2.テーマ2 情報リテラシー教育のあり方

・ 現在の図書館サービスは、資料を書架に配架するまでの業務で終了している。
これからは、利用者が実際にその資料を手にとるところまでの活動(サービス)をやるべき
である。また、資料も利用者が探している1冊だけではなく、広範囲につながる検索サービ
スをめざすべきである。そのためには、利用、OPAC、ガイダンスについては、同等か、それ
以上の価値をつけなければならない。いま、ほとんどの図書館が情報検索面では進んでいるが、
大学図書館が研究図書館である原点にもどり、教員側が図書館に求めている
「ニーズ」を知ることが必要である。それが、サービスの具体化につながるのではないだろ
うか。

(第2班)
第2班は、2つのテーマについて意見を述べ合った。

テーマ1 新しい大学図書館の機能と運営
    
大学全体の危機意識に対する実践的介入(取り組み課題)として、図書館員として
今、何ができるかに着目。各館の新しい活動や現状を発表し合い、意見を述べ合った。

【図書館のアウトソーシングについて】
・ 図書館員として一概に賛成とは言いがたいが、図書館運営の機能を高めていく一方向性と
して、あるいはコスト面重視の経営者の立場(見解)や、時流に沿った運営が今後求められ
るであろうことを想定し、部分委託といった形で検討すべき時期にあるかもしれないといっ
た意見が多数あがった。また、図書館業務には、専門性を問われる業務と数量的な業務がある
が、数をこなさなければいけない業務に関しては、部分的に委
託することで、本来の図書館員としての専門性や質を高める時間を確保できるのではないかと
いった意見が多数あがった。
・ ボランティアの採用に関しては、人件費の削減といった経費面だけのメリットだけでなく、
例えば、図書館学を学ぶ学生さんにボランティアを依頼することで、現状の図書館サービスを
維持し、なおかつボランティアの学生さんを通じて、利用者のニーズを知る・つか
むといった大きなメリットが得られるのではないかとの意見があがった。
・ また、全国的な流れをみると、大規模な図書館に比べ小規模な図書館ほど、外部委託への
移行頻度が大きいように感じるとの意見もあがった。

【図書館活動のアピール】
・ サービス拡大の一環として一般人への図書館開放を行っている大学の事例報告。
・ 自館の資料をどうみせるか?
おおがかりな配置換え:比較的新しい資料を目に付く所に置くことで、図書館をアピールして
いる図書館の紹介。サービスの提供の仕方を見直し、利用者のニーズをつかむことが大切との
意見があがった。
・ 図書館主催の公開講座を実施(講師は多様)している大学図書館の事例報告。
・ 予算獲得の意味合いも含めて、アピールすることは重要との意見が多数あがった。
・ また、博物館や美術館のとりくみ(入館者数が年々減少していることに対して、さまざまな
取り組みがなされているとの事例報告)に対し、柔軟性を持って図書館運営にもどんどん取り
入れたいとの意見が多数あがった。

テーマ 2 情報リテラシー教育のあり方

・ 現状報告:新入生に関しては4月から5月の比較的新しい時期に利用案内を実施している大
学が大半を占め、論文対策や情報検索に関しては、希望者はもちろん、授業の一環としてガイ
ダンスを実施している大学がほとんどだった。
・ 論文作成を想定したガイダンスにかたよりがちだが利用者の真の要望を満たせているだろう
か。まずは職員のスキルアップが必要であるとの意見があがった。
・ 短大の場合、リテラシー教育の重要性を感じてはいるものの、カリキュラムがぎっしりとつ
まっているため、時間数確保が難しいとの現状報告があった。

(第3班)
第3班はテーマ「新しい大学図書館の機能と運営」について意見を述べ合った。

講演会のレジュメを元にディスカッションをした。(1・4・5・6について)

1.これでよいのか大学図書館 −どう考える外部委託−
アウトソーシングについて
・ 鹿児島大学のみ、遡及入力と雑誌のチェックインを委託している。
・ 規模が小さい図書館だと委託しにくい。
PFI化するかどうか。
・ 図書館をPFI化した場合、図書館員は必要なのか。リテラシー教育等も含めてPFI化で
きるのか。
・ 教官との連携はどうなるのか。逆に割り切って教官からの要望が出てこなくなるかもしれ
ない。
・ PFI化がよいかどうかは厳密に比較しなければ分からない。

4.資料費と学術情報 −効果的な予算の使い方−
Amazon.comとあらたな国際流通方式
・ Amazon.comを利用している館があった。利点として、安く、早い、品切れや絶版の本も
入手できる。問題点として、会計書類の作成を依頼できない、決済方法がカード決済の
みである。

5.一人一人の図書館経営論 −JANULアンケートを読み解く−
組織・機構
・ 大学図書館員は人事異動で定期的に異動する。そのため特に図書館員を希望していない職
員も図書館に勤める場合がある。一方で司書の希望に対して就職先が少ない事を考えると、こ
の意欲的な人材を確保できるようにどうにかならないだろうか。
専門性
・ 司書資格を持っていても仕事ができるとは言い切れない。専門性を高めるために研修の機
会を増やしてほしい。また、ワーキンググループ等を作ってスキルを高めていく必要がある。
社会連携
・ 以前ボランティアの方が来ていたという図書館があった。来てもらうと人手が多くなり助
かる一方で、ボランティアなので図書館に来る日が一定せず、先を見越した計画が立てられな
い等の問題もあった。
・ ほとんどの図書館が学外者を受け入れていた。

6.これからの図書館 −課題と展望−
・ たくさんの人に図書館を利用してもらいたい。利用者をどうやって集めるか。
・ 利用者を呼ぼうということで年行事ごとに飾り付けをしている図書館もあった。ただ、一部
の利用者から研究機関の図書館なので感心しないとの声もある。

      
                                                                         以上