図書館情報学研究会報告
「図書館情報学研究会」及び「大学図書館問題研究会福岡支部」合同例会報告
                      図書館情報学研究会代表 川路孝昭
                         (鹿児島純心女子短期大学)

1. 日 時 平成11年9月11日(土) 午後1時〜午後5時30分
2. 会 場 鹿児島純心女子短期大学27号館3階第2オーディオルーム
3. 参加者 58名(大学図書館関係28名, 学校図書館関係24名, 公共図書館3名, その
         他3名)
4. 日 程  
 	  第1部 特別講演 子供に語る「死」と「生」 午後1時〜午後2時
       講師 種村エイ子氏(鹿児島短期大学講師)   
      第2部 ディスカッション          午後2時30分〜
                                午後5時30分
      「図書館におけるインターネットサービスの諸問題を考える」

5. 概 要
(1)特別講演 子供に語る「死」と「生」講師 種村エイ子氏(鹿児島短期大学講師)
  種村氏は、自らの体験を交えながら、生と死の意味を教える「いのちの授業」を鹿
 児島県内をはじめ、全国各地の小・中・高校で行っている。その概要と今後これらの
 活動を支えていかなければならない図書館の役割、そして、本の持つ力についての講
 演であった。
  なお、講演に際しては、「いのちの授業」に対する中高校生の反応を実際のホーム
 ページを通して紹介したり、『葉っぱのフレディ』の原書と翻訳本との違いを説明し
 たアメリカ在住の方のメールを話題として提示するなど、第2部の「図書館におけるイ
 ンターネットサービスの諸問題を考える」と関連付けての講演であった。おそらく、
 種村氏にとって、インターネットを使った講演は初めてであったと思う。こうしたご
 配慮の基で行われた講演であったが故に、ネットワーク不調により一部のホームペー
 ジの紹介ができなかったことがとても悔やまれる。

(2)ディスカッション「図書館におけるインターネットサービスの諸問題を考える」
1.進行方針
 第2部は、以下の二つの方針で設定した。
 ・インターネットに接続したパソコンを図書館で利用者に公開しサービスする際に起
  こる様々な問題点を協議する。
 ・この協議の際に話題となったホームページは、会場に持ち込んだパソコンを使って
  実際に参加者に見ていただき相互の理解を深める。
  この方針の基、実際の協議においては次の三部に分けて進めることにした。
 まず最初は「インターネットを使った図書館サービスの可能性を探る」というテーマ
 を設定した。
  ここでは、インターネットを通して利用できるサービスの紹介を兼ねて、図書館に
 おけるインターネット活用事例をいくつか紹介してもらう。おそらく、この部では、
 これからインターネット接続を行う予定の参加館の方にとって、ばら色の世界を紹介
 することになると思う。
  そこで、次のテーマだが、では、実際にインターネットに接続してサービスする際、
 どんな問題点があるのか、それを提示し、各館の対応を紹介し合い、今後の活動の参
 考にしてもらうという方針で「図書館におけるインターネットサービス考える」とい
 うテーマを設定した。
  この部分の協議は、以下の3つに分けて進めることにした。
 「インターネットに接続する上での問題点」
 「インターネット上の諸サービスを図書館で行う上での問題点」
 「インターネットに接続したパソコンを維持管理する上での問題点」
  最後の部は「図書館と情報センターとの合体」をテーマとして設定し、図書館の未
 来像を考えてみることにした。

2.概要報告
 まず、簡単にインターネット関連用語の説明があった後、各大学におけるインターネ
ットの活用事例が報告された。この事例報告では、当初、六つの項目にわたって報告さ
れる予定であったが、大雨による交通機関の乱れにより報告者がまだ会場に到着してい
ない等の理由で、鹿屋体育大学の「JPG形式による紀要の公開」、鹿児島純心女子短
期大学が実施した「図書館だよりのPDF化」と「ドキュメントファイリングシステム
の導入計画」、そして、九州大学附属図書館の「貴重資料画像データベース」について
報告が行われた。
 次はメインテーマである「図書館におけるインターネットサービスの諸問題を考える」
について、報告と意見交換が行われた。
 この部でも、最初に予定されていた「インターネットに接続する上での問題点」をは
じめ、いくつかの項目が割愛され、主に次の項目について報告と意見交換が行われた。
 ・図書館におけるホームページ印刷サービスの是非
 ・図書館利用者向けの電子メールサービスの是非
 ・アクセス可能サイトの制限は必要か
 ・チャットへの対応
 まず、インターネットにより提供される電子資料が図書館資料であるかどうかについ
て、図書館雑誌などに掲載された論文や「大学図書館における電子図書館的機能の充実
・強化について(建議)」(学術審議会 平成8年7月29日)からの引用により、い
くつかの意見が提示された。そして、これを基に図書館におけるホームページ印刷サー
ビスの是非について、意見交換が行われた。
 その結果、インターネットを通して得られる電子情報は図書館資料であると断言する
には難しい状況にあるが、PDF形式のデータや電子ジャーナルなど、複写を前提とし
て公開されている電子情報も存在することから、図書館におけるホームページの印刷サ
ービスが著作権法に違反すると言いきれない部分もあることが確認された。本件につい
ては、今後も検討する必要があると思われる。
 この他、図書館内(閲覧室等)での電子メールサービスやチャットへの対応、ホーム
ページのアクセス制限について協議され、学校図書館、公共図書館、そして大学図書館
のそれぞれの立場から異なる意見が出された。この件についても、今後、さらに検討が
必要であろう。
 最後は「情報処理センターとの合体」である。この件については、国立大学の状況に
ついて報告があったが時間不足のため十分な意見交換ができなかった。
 なお、会場からの質問に応える形で、「横断検索システム」と「山口県域ネットワー
ク」の概要とシステムの今後の運用等について報告があった。


第2部配布資料

第1部 インターネットを使った図書館サービスの可能性を探る
1. インターネットとは
1-1 インターネットは「からっぽの洞窟」?
1-2 用語の整理
1-2-1 インターネット
1-2-2 ホームページ
1-2-3 WWW(World Wide Web)「世界を覆う蜘蛛の巣」

2. 事例報告
2-1 インターネットへの目録公開
    総合目録の形成 
    <1>山口県域ネットワーク <2>横断検索システム <3>NACSIS-CAT
2-2 紀要の電子化
  PDF
2-3 イントラネットドキュメントファイリングシステム
2-4 CD-ROMサーバの導入
2-5 データベースの検索サービス
2-6 電子メールの活用
 
第2部 図書館におけるインターネットサービスの諸問題を考える
1. インターネットに接続する上での問題点
2. 運用上の問題
2-1 誰が、インターネットの使い方を説明するのか
2-2 ホームページのリンクについて
2-3 図書館におけるホームページ印刷サービスの是非
2-4 図書館利用者向けの電子メールサービスの是非
2-5 アクセス可能サイトの制限は必要か
2-6 就職情報の検索サービス
2-7 広報媒体としてのホームページの可能性
2-8 チャットへの対応
3. インターネットに接続したパソコンの維持管理

第3部 図書館と情報センターとの合体