平成11年度
鹿児島県大学図書館協議会講演会記録
                     鹿児島県大学図書館協議会研修委員会
                     川路孝昭(鹿児島純心女子短期大学)

1. テーマ「使いやすい情報空間をめざして - レイアウトと図書館家具」
2. 講 師 平湯文夫氏(図書館づくりと子どもの本の研究所代表 元純心女子短期
            大学教授・図書館学)
3. 日 時 平成11年12月15日(水)午後2時30分〜午後5時
4. 場 所 鹿児島純心女子短期大学 27号館2階会議室
5. 参加者 27機関35名(学校図書館関係者を含む)
6. 概 要
 平湯氏の講演は、全国各地の図書館を撮影したスライド約70枚を投影し、それぞれ
に解説を加えながら行うスライドトークと言われるスタイルのものであった。よって、
講演の記録作成にあたっては、スライド毎に述べられた内容を記載すべきであるが、
70枚にも及ぶスライドを載せることは困難である。
 したがって、本稿作成にあたっては、筆者が講演を聞いた際に書き残したメモを基
に、講演の概略のみを書き起こすことに留め、平湯氏の発言内容を忠実に再現する方
法は取らなかったことをお断りしておきたい。
 平湯氏は、概ね次のようなことを述べた。
 *項目名は筆者が立てたもの。

図書館で大切なもの
 図書館でなによりも大切なものは、分類やカード書きよりも、選書(魅力ある本を
選ぶこと)と展示(魅力ある本を利用者に引き合わせる活動)である。また、それら
の業務に携わる人である。
 
書架について
・図書館で大切な家具は書架である。図書館で一番大切な本を、利用者にめぐり合わ
 せるためにディスプレイする家具だからである。書架は料理をおいしく見えるよう
 に盛り付けるお皿のようなものであって、収納架ではない。
・書架は奥行きが浅く、側板と中仕切りはさらに狭く、本が前面にでるものがよい。
・模様替えで移動できるように書架のうしろの壁も仕上げておいてほしい。
・フロアーに置く書架はすべて視線を遮らない高さにすると、圧迫感がなく、全体を
 見渡せることになる。背の高い書架は壁面に設置した方がよい。
・図書館を狭くしているのは奥深い書架である。背が高く、本を隠してしまう書架は、
 交換した方がよい。

書架を魅力的にするには
 古い本など、まず手に取られることのない本は、利用者を図書館に引き付けるより
も背けさせるものである。このように本としての命を持たない本は廃棄して、書架を
魅力的にすることが大事である。古びた本1冊は新しい10冊の本の鮮度まで奪う。

その他
・館内がよく見えない、入ると、そこには冷たい閲覧机が並んでいるというのがこれ
 までの学校図書館ではなかったか。人は閉ざされて見えないところには入ろうとし
 ないものである。図書館は学習や読書の前に、本にめぐり合うところである。館内
 に入るなり、閲覧机が一面に並ぶというのは、おかしいのではないか。
・図書館は、資料を使った学習をする場だから、教室のように机を一ヶ所に集める必
 要はない。
・生活動線の集まるところに図書館を設置してほしい。広さを十分にとり、玄関を開
 放的にすることが大事。
・館内が廊下や教室、校庭から、よく見えるようにしてほしい。
・廊下側から館内が見えるように出入り口のドアの上下とも透明ガラスを使用してほ
 しい。
・開口部は大きくしない事が大事。図書館を光で明るくしようとせずに、楽しそうな
 本を並べて明るくしてほしい。輝いている本が書架にあふれていれば図書館は明る
 くなる。太陽の光で色あせてしまった本が館内を暗くしていることを理解してほし
 い。
・書架があって、閲覧机があればいいというのが従来の図書館。図書館のレイアウト
 を考えるとき、まず最初に、楽しいところにするにはどうするかを考えてほしい。
 毎日のニュースにあわせて展示する大き目の楕円形等の展示台も置きたい。そして、
 館内に入るとすぐ見えるところには、壁一面に雑誌架を置きたい。窓や入り口は、
 木製とし、木そのものの色を生かしてほしい。色塗りはしない。アルミサッシ等は
 使わないでほしい。

 なお、平湯氏が講演された内容の一部は下記資料にも掲載させている。

・『図書館を家具とレイアウトで生きかえらせる』木城えほんの郷(宮崎県), 1996.
・『図書館を生きかえらせる −平湯モデル図書館家具のとり入れ方とカタログ』図書
  館づくりと子どもの本の研究所(長崎), 1999.
・「日本の図書館もここまで発展しました - 図書館は、市民と共につくり、共に育て
  ていくもの」(『沖縄県図書館協会誌』第2号, 1996.12, p.41−66.)
・「学校図書館を生きかえらせる - 今日からでもとりかかれる方法を具体的に」(『
  教育ながさき』. 長崎県教育センター, 1996.10,  p.4−7.)
・「図書館の建物と家具とレイアウト」(『週刊沖縄建設新聞』(第1854号)1998.4.15
  から12回にわたって連載 )
・「児童室を家具とレイアウトで生きかえらせる」(『図書館雑誌』(Vol.93 No.12)
  1999年12月号から3回連載開始)